コラム

文系におすすめ|自然の本|世界の見え方が変わる植物の世界【植物は<知性>をもっている】

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あなた

「自然や植物が好き。もっと自然のことを知りたい。でも自然に関する本って、理系向けが多くて読みづらい。文系でも楽しめる本を知りたい。」

こういった方向けの記事です。

 

文系でもとっつきやすい自然の本を探している方や、自然への見方を変えてくれる本を探している方に是非おすすめしたいと思います。紹介するのはこちらの本、『植物は<知性>をもっている/ステファノ・マンクーゾ+アレッサンドラ・ヴィオラ著』です。

 

私も自然が好きなので、よく自然に関する本を探すのですが、理系の方向けや、博物学になじみがある方向けのものが多く、本探しに苦労しています。でもこちらの本は、文系の私でもまったく違和感なく読めましたし、つい引き込まれて、いつの間にか読み終わってしまったくらい興味深い内容でした。

 

また、自然への理解が深まったことで、自宅で育てている植物への向き合い方が変わったり、自然に対して人類はどうあるべきかと考えたり、といった意識や行動の変化もありました。特に、影響を与えられたポイントをふまえてご紹介していきたいと思います。

 

植物は知性を持っている

                   

この本は全編を通して「植物は知性を持っている」と主張しています。人間と同様に五感で物事を認識し、脳で考え、判断する様を思い浮かべると、「植物に知性なんかあるわけない」と言いたくなるかもしれません。でも実は、「問題を解決するために、物事を認知し、考え、判断する能力」という知性の定義に立ち戻って考えると、植物は間違いなく「知性を持っている」と言えます。

植物は、人間が五感を使って行っている行動を、植物独自の20個もの感覚を使って行います。20個もの感覚を用いて、大量の環境変数(光、湿度、化学物質の濃度、他の植物や動物の存在、磁場、重力など)を認識し、そのデータをもとにして、養分の探索、競争、防御行動、他の植物や動物との関係など、様々な活動にまつわる決定を絶えずくだしています。植物が、物事を認識し、考え、意思決定をするために、どんな身体構造を持ち、どんな行動を行っているか、ご紹介していきます。

 

植物の生存戦略と身体構造

 

植物の生存戦略

 

5億年前、地球最初の生物たちは、定住民の生活スタイルと遊牧民の生活スタイルというそれぞれ異なる生活スタイルを選び、植物と動物とに分化していきました。定住の生活スタイルを選んだ植物は、生きるための必要なすべてのものを、地面、空気、太陽から引き出す能力を進化させ、遊牧民の生活スタイルを選んだ動物は、生きるために必要なすべてのものを得るために動植物を狩る運動能力を発達させていきました。その進化の中で植物が進化させてきたのが次の身体構造です。

 

大部分を食べられても生きていける植物の身体構造

 

果てしなく長い時間をかけた進化プロセスの中で、それぞれの生育環境に合わせて特徴や能力を獲得したり失ったりしながら、生き残るために最も適した特徴を選び取ってきました。移動や攻撃によって捕食者から身を守れる動物や人間に比べて、定住スタイルを選んだ植物は、捕食者からの攻撃に対する「消極的抵抗」手段を発達させてきました。それが、”身体のモジュール構造”です。

人間や動物が持っている脳や肺、目、鼻、耳、口などの器官は体の一か所に集中しており、どれも一つあるいは一対のため、一度失うと再生することはありませんが、植物の場合、生きるために必要な複数の機能が体のいたるところに備わっており、これによって、植物は捕食者に体の大部分を食べられたとしても生き延びることができます。体の90~95%を食べられても、残った5%が再生し、完全体に戻れる植物もあります。

 

イラストにするとこんなイメージでしょうか。根が隠れてしまっていますが、根も同じです。

                    

植物は20個もの感覚器官を持っている

 

植物は、人間の持っている5感を含めて、20個もの感覚があることがわかっています。そのほかにも、湿度を感知する力(地面の湿り具合を測定したり、かなり遠くにある水源を感知する)、重力を感知する力、 磁場を感知する力、空気中や地中に含まれている化学物質を感知し測定する力などを持っています。

植物の感覚器官は、動物が持っているような、脳、心臓、肺、口、胃などの個々の器官ではなく、それらの器官が実行するのに相当する機能というかたちで植物の体に備わっています。そのため、肺がなくても呼吸ができ、口や胃がなくても栄養を摂取でき、骨格がなくても直立するなど、専用の器官がなくても、見て、味わって、聞いて、コミュニケーションをとることができます。これらの機能は、植物の体全体に散らばっているもの、根に備わっているもの、葉に備わっているものなど、様々あります。次の項で、各機能をご紹介していきます。

 

植物の視覚

 

「視覚」の定義を辞書で調べると、「光学的な刺激の知覚を可能にする感覚」とあります。この定義に基づくのであれば、植物は間違いなく視覚を持っているといえます。植物の内部ではいくつかの化学物質が光受容体(光を感知するセンサー)として機能しています。「光受容体」によって光をとりこみ、光の質と量を識別し、利用することができます。光受容体は、葉だけではなく、茎の若い部分や先端、巻きひげ、芽、根、さらには木など体の至るところに備わっています。人間に例えるなら 小さな無数の目で全身が覆われているようなものです。光合成を行う植物にとって、生活を維持していくためになくてはならないエネルギーである光を獲得するために、植物は視覚能力を強化してきました。

 

植物の嗅覚

 

植物の体全体にある無数の細胞の表面に、揮発性物質を捉える受容体が備わっており、受容体が揮発性物質を捉えると、信号を発し、身体全体に情報を伝える信号の連鎖が始動します。こうして植物は匂いを感知し、周囲の環境から情報を得たり、植物同士や昆虫とのコミュニケーションを図ります

 

匂いを出す植物

匂いを感知するだけではなくて、植物は自分でも匂いを作り出します。 それぞれの分子が決まった割合で他の分子と混ざり合い、その匂いを発する混合物が植物の言葉として機能します。植物はその匂いを出すことにより、差し迫る危険の警告や誘惑や拒絶のメッセージなどを伝えています。例えば、ジャスモン酸メチルは、ストレスにさらされた植物が「今日は具合が悪い」というメッセージを伝える時に放つ化合物です。

                           

植物の味覚

 

植物の根は絶えず地中で土を味見していて、硝酸塩、リン酸塩、カリウムといった栄養素として使われる化学物質を探し回っています。植物の根は、数立方メートルの土の中に隠された微量のミネラルをも識別し、的確に見つけ出す能力があります。

 

肉食の植物

食事の仕方が違う植物種もたくさんあります。それは肉食植物です。 種類は意外に多く600種類以上あることが知られています。たとえば、ハエトリグサは葉の内側の表面を覆う赤い腺から甘い汁を分泌し、虫を引き寄せます。虫の足によって葉が刺激されると、二枚の葉が起き上がって虫を捕らえ、トゲの並んだ葉がしっかり閉じて、虫が死ぬまで押さえつけます。しかし、美味しくないものや、消化できないものを捉えた時は、すぐにまた葉を開きます。ネペンテス(和名:ウツボカズラ)の大きいものになると、50cm程の袋を有し、クワガタなどの大きい昆虫から、トカゲやネズミ、コウモリなどの小動物までをも捉えて消化します。 捉えるだけではなくて、捕らえた獲物に含まれている養分を吸収する消化能力を持っています。酵素を作り、その酵素が動物を溶かし、動物に含まれている栄養素を葉に吸収させることができます。

 

植物の触覚

 

植物は、刺激を感知し、区別する能力を持っています。たとえばおじぎ草は、水に濡れたり、風に揺れたりしただけでは、葉は閉じませんが、手で触れば閉じます。つまり、ある刺激が危険ではないと分かれば閉じませんが、危険であると分かれば葉を閉じます。多くの花は花粉を媒介する昆虫が花に入り込むと、花弁を閉じ、花粉をたっぷりと体に付けさせるまで閉じ込めて、それからようやく花を開いて虫を解放します。

 

触覚を使って、障害物を避け、栄養を獲得する

根にも触覚があります。 地中で根が石などの障害物にぶつかると、障害物を回避するためにその周りをぐるりと迂回して、成長を続けていきます。根の先端部分が、その重要な機能を果たしています。つる性植物は、生きていくために欠かせない光を、効率よく得るために触覚をつかっています。植物が光を十分に受けるには、高く成長する必要がありますが、十分に成長するには数年間という時間がかかります。しかし、つる性植物は触覚を使って支柱を探し、短い時間で光に効率よくたどり着きます。

 

植物の聴覚

 

人間の場合 、音波とよばれる振動が空気中を移動し、耳介がそれをキャッチするといったように、音の運び屋として「空気」を利用しています。植物の場合は、音の運び屋として「土」を利用しています。植物の一個体を構成するすべての細胞が土に伝わる振動を捉えることができます。

 

音による進路や成長の変化

地中で行われた実験によると、根はかなり幅広い帯域の音の振動を知覚し、「屈音性」という性質に従って伸びる方向を見定めながら成長することが確認されています。

また、フィレンツェ大学国際植物ニューロバイオロジー研究所で行われた研究によると、音楽が流れる中で育ったぶどうは、全く音楽を流さずに育ったブドウよりも生育状態が良かった、という研究結果が出ています。それだけではなく、成熟が早い上に、味、色、ポリフェノールの含有量の点で、優れたぶどうを実らせたそうです。

植物の成長に影響を及ぼしているのは、音楽を構成する音の周波数です。(残念ながら、音楽のジャンルを区別しているわけではないそうです。)一定の周波数・・・特に低周波が、種子の発芽、植物の成長、根の伸長に良い影響を与えており、反対に高周波には、成長を抑える効果があります。

 

植物の出す音

植物は音を聞き分けるだけでなく、音を発生させていることが、2012年イタリアで行われた研究によって明らかにされています。音を出す仕組みはまだ解明されていませんが、 その音はパソコンのマウスをクリックする音と似ていることから、 「クリッキング」と名付けられています。この音はおそらく、細胞が成長する時に細胞壁が壊れる音だと考えられています。最近の研究では、クリッキング音で根端が互いに知覚し、コミュニケーションをとっているのではという仮説もあるそうです。

 

植物の神経

 

動物や人間は神経を通して「痛い」「寒い」「固い」などと知覚しますが、植物には神経がありません。神経ではなく別の方法で知覚しています。その方法は距離によって異なります。

短い距離の場合、、隣り合った細胞間を突き抜けるように存在しているとても小さな穴を通って、一つの細胞から別の細胞へと電気信号を伝えます。これを「原形質連絡」と呼びます。

根から葉へ、といった長い距離の場合は主に、植物の茎の中を縦に走る柱状の組織の集まりである「維管束系」を使用して電気信号を伝えます。維管束系は人間の血管系にとてもよく似ていて、動脈と静脈システムのように、植物の維管束系も低いところから高いところへ、高いところから低いところへ液体を運ぶ循環機能を持っています。このシステムを用いて、数ミリから 数十メートルまで離れている体の各部に信号を伝えることができます

 

植物の脳機能の仕組み

 

ダーウィンの著書である『植物の運動力』では、「植物の根端(根の先の端部)には、動物の脳がもつ機能の多くを備えた植物なりの脳に対応するものがある。幼根の先端は、体の前方にあって感覚器官からの影響を受け取り、それに適応した運動を引き起こす下等動物の脳のような働きをしていると言っても決して言い過ぎではないだろう。」と語られています。この「根=脳である」という学説は、当時の科学界で大きな反発を呼び、ドイツの植物学者たちから大きな批判を受けましたが、 現在では根端は環境に関する無数の物理的、化学的な変数を感知できるとされています。

非常に小さな植物一個体の根系でも、千五百万以上もあるという根端は、それぞれが環境から多くのデータを収集し、数多くの変数を絶えず計測しています。例えば、重力、温度、湿度、磁場、光、圧力、化学物質、有毒物質、音の振動、酸素や二酸化炭素の有無など。根端には、地中での根の成長を正しい方向に導く機能と、水、酸素、養分を探して土の中を探検する機能があることは、現在では一般に知られています。その機能はとても複雑なものです。

また、植物の脳が機能する仕組みは、コンピューターシステムに例えて説明されています。コンピューターが複雑な計算を行う方法として、一つはより優れたスーパーコンピューターを作ること、もう一つは知能を分散させるインターネットのようなネットワークを作ることだとすると、植物は後者と同じ戦略を採用しています。一つ一つの根端が大きな計算能力を持っているわけではありませんが、他の根端と連携することで、一個体を構成する組織の中で複雑な戦略実行を可能にします

知的機能を管理する特別な器官を持っていない植物がこのネットワークシステムを可能にしている秘訣は、わずかな基本ルールを守ることにあります。例えば、大編隊の鳥の群れが同じ方向に進みつつもぶつかることがないのは、「自分の前方の鳥と、数cmの距離を保て」というようなルールがあるから。植物は、この「分散知能」という形式を発達させてきました。分散知能のもとでは、生物の各個体が集まって群れを作るとき、個体そのものには存在しない性質が全体として現れます。それを「創発」と言います。

 

植物は複雑な意思決定を行っている

各根端の認知計算能力と、一個体を構成する根系のネットワークがかけあわさった「創発」によって、植物は常に複雑な意思決定を行っています。生きていくのに必要な、酸素、ミネラル、水、養分などを獲得するためには、様々な意思決定が求められます。

リンのある右に行くべきか、あるいは窒素のある左に行くべきか、下に伸びて水を補給すべきかといった方角の決定や、根が伸びていく先にぶつかる障害物を迂回したり、 敵に出くわして防御しなければならないこともあります。その選択は、一本の根にとっての必要性だけではなく、植物の一個体全体にとっての必要性を考慮に入れなければなりません。一本の根の必要性と個体全体の必要性が食い違うこともあります。根は単独ではなく、植物一個体の根系を構成する他の無数の根端とのネットワークを通して、意思決定を行っています

 

植物のコミュニケーション

 

「メッセージを発信者から受信者に伝えること」が、コミュニケーションの定義です。コミュニケーションを行うには、メッセージ・発信者・受信者の3つの要素が必要になります。発信者と受信者、この2つの主体が異なる個体でなければならない、とはされていないため、ひとつの個体内での異なる部分間のコミュニケーションも含まれます

 

コミュニケーション方法

 

一個体内のコミュニケーション

人間の場合は、脳が情報処理の中心のため、どんな信号もまず脳に向かって送られます。それに対して、体中に多数の情報処理センターがある植物は、体の一部分から別の部分へと、いつも同じ経路を使うことなく必要な場所に向かって迅速かつ効果的に情報を送ることができます。例えば、根から葉へ、一枚の葉から、別の葉へと直接メッセージを送ることができます。

 

外部とのコミュニケーション

植物の仲間同士のコミュニケーションは、植物固有の言語を使って行います。様々なタイプの情報が含まれた化合物を空気中に放出し、コミュニケーションをとります

また、言葉以外に、人間が表情や姿勢、身振りなどのボディランゲージを用いてコミュニケーションをとるように、植物も、触れ合ったり独特の姿勢をとったりして、近くの植物とコミュニケーションをとります。たとえば、フランスの生物学者フランシス・アレが定義した「シャイな樹冠」がその一つです。 隣り合う樹木が互いに接触するのを避ける現象をこのように呼んでいます。ブナ科、マツ科、フトモモ科などの一部の樹木にこの現象が見られます。木の枝葉がコミュニケーションを取り合い、互いに樹冠や葉が重なり合わないように、それぞれのテリトリーを決めています。

 

土の上にいる生物とのコミュニケーション

 

植物は生まれた場所から移動することができないため、空気や水、昆虫をうまく利用して、外部にメッセージを送り届けます。例えば、昆虫から攻撃を受けた時に、空気中に揮発性化合物の信号を放出し、ほかの植物に警戒警報を出したり、場合によっては、植物を食い荒らす昆虫の天敵に援軍を要請することもあります。

 

土の中にいる生物とのコミュニケーション

 

植物は、土から上の部分だけでなく、地中にいる微生物や菌、昆虫などともコミュニケーションをとって、お互いに協力しながら共生しています。

中でも代表的なのが菌根(きんこん)です。菌類が植物の根に侵入して形成する、特有の構造を持った共生体のこと(Wikipediaより)をいいます。 菌類がリンを含むミネラルを植物の根に供給し、そのお返しとして植物が光合成で作った糖類の一部を受け取り、エネルギーとして利用します。

これを行うにはコミュニケーションが欠かせません。 なぜなら、菌の中には、根を攻撃して栄養を奪取するだけでなく、根の細胞を破壊する悪者もいるからです。それを見分けるために、化学物質を使った信号を交換して菌類との対話を行い、植物は相手の目的を明確にしてから取引を行います

 

親族を見分ける

 

人間と同様、植物も自分の親族を認識でき、大抵の場合、他人よりも親族との間に親密な関係を築きます。植物が親族を区別する能力を発達させてきた理由は、動物や人間と同じく遺伝子を守ることにあります。親族と争って膨大なエネルギーを無駄にするより、同盟を結び協力した方が、進化や生態学的機会などにおいて効率がいいのです。

例えば、親族を見分けられれば、無駄にエネルギーを費やすことなくテリトリーを守り、敵から身を守ることができます。また、遺伝子の近い個体同士の繁殖を避けることもできます。自分とよく似た遺伝子を持っている個体が成功すれば、そこから間接的に利益を得ることもできます。

見分け方はと言うと、根から放出される化合物質の信号を交換することで親族かどうかの判定を行います。

 

光を手に入れるための戦い

 

人間がより多くのお金を得るために試行錯誤や競争行動を行うように、植物も効果的に光をとらえるために試行錯誤や競争行動を行います。二つの植物が出会うと、光を手に入れるための戦いが始まります。背の高い方の植物は、背の低い方の植物にあたる光を遮ろうと、葉で日陰を作ります。そのため、植物はライバルの背丈を越えようと急いで成長します。この動きを、日陰からの逃走という意味で「避陰反応」と呼び、うまく光を受けるために葉を動かし、体の位置を修正しながら、光の指す方向に向かって成長していく性質を「屈光性」と呼びます。

避陰反応をしている間、植物がかなりのスピードで成長するのは、ライバルよりも背を高く伸ばし、光をより多く受けるためです。競争することでより早く成長する人間と、実によく似ていますね。

 

まとめ

 

最後に、この本の主張である「植物は知性を持っている」に立ち返ってみたいと思います。「問題を解決するために、物事を認知し、考え、判断する能力」という知性の定義から、以下を振り返ると、

  • 植物の持つ20の感覚
  • 脳機能、根系ネットワークでの意思決定
  • 周囲の生物との共生関係の構築
  • 親族を見分けたり、競争行動を行うなどのコミュニケーション

植物には確かに、「知性がある」ことがわかります。

 

そのうえで、この本は以下のような事実を持って、重要な問いかけを与えてくれています。

  • 地球上に最初に登場した生物は原核単細胞生物。単細胞生物が光合成によって酸素を作り出したおかげで、地球上に人類や動物などの生き物が広がった
  • 人間や動物は、植物が光合成することで排出する酸素がないと生きていけない
  • 人間が食べているものは、植物か、植物から栄養をとって成長した生き物だ。
  • 植物は動物(昆虫から、トカゲやネズミ、コウモリなど)をも捕食する。
  • 地球上の生物のうち、動物と植物の総重量を比較すると、99.5%~99.9%以上を植物が占めているのに対して、人間も含めた動物はわずか0.1~0.5%
  • 植物は20の感覚や脳機能、神経システムを有しており、生き残るためのコミュニケーションや活動を行っている
  • 地球が生まれてから、数億年と生きてきた植物に対して、人間が生まれたのは後半のわずか25万年の間

 

それは、「動物が上位で、植物が下位に位置するという生物ピラミッドの考え方は本当に正しいのだろうか?」ということです。

 

インド現代史に偉大な足跡を残したインドの科学者であるジャガディッシュ・チャンドラ・ボース(1858-1937)は、「植物と動物は根本的に同じである」と主張し、次のような言葉を残しています。「これらの樹木は、我々と同じ生命を持っており、食事をし、成長し、貧困にあえぎ、苦しみ、傷つく。盗みを働くこともできれば、助け合うこともできる。友情を育むこともできれば、自分の命を子供たちのために犠牲にすることもできる。」

2008年末には、スイス連邦倫理委員会が「植物に関する生命の尊厳―植物自身の利益のための植物の倫理的考察」と題された報告書を提出し、世界で初めて植物に一定の尊厳を認める指針を出しています

 

以上、『植物は<知性>をもっている/ステファノ・マンクーゾ+アレッサンドラ・ヴィオラ著』のご紹介でした。これまで植物を、「受動的な存在で、感覚を持たず、コミュニケーションも行動も行っていない、人間が庇護してあげなければならない存在」と考えていた私にとって、自然への見方を根本から覆し、自然との向き合い方に大きく変化を与えてくれた本です。自然が好きな方や、植物を育てている方はもちろん、人類はどう生きるべきかという根源的な問いを抱えている方に、参考になれば嬉しいです。お読みいただきありがとうございました。

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